今アツい化学素材を中心に、多領域にわたる製品を製造する企業に学生のうちにするべきことをインタビュー!!(ナガセケムテックス株式会社)
会社説明
化学品を中心に事業展開している長瀬産業グループ(NAGASEグループ)の中核メーカーのナガセケムテックス株式会社さんにインタビューしました。半導体や電子部品用封止材、自動車、航空機用構造材料、半導体・液晶用薬液、工業用機能化学製品、透明導電性コーティング材料、食品用酵素など、多領域でグローバルな製品を創出しています。
今回は、ナガセケムテックス機能樹脂事業部製品開発部MC材料課の今村圭吾さんにインタビューを受けていただきました。今村さんは、神戸大学大学院理学研究科化学専攻を卒業後、2017年4月に新卒でナガセケムテックスに入社しました。

今回は、今村さんに今の学生のあるあるな悩みについてインタビューさせていただきました!

インタビュー
ー今村さんの技術者としてのバックグラウンドを教えてください。
大学時代は3年間有機化学系の研究室に入っていて、有機ELディスプレイの材料で、白色発光する分子を設計、合成し物性評価を行う研究をしていました。そこからナガセケムテックス株式会社に入り、何部署か異動したのですが、全ての部署でエポキシ樹脂を取り扱っていて、現在は半導体封止用のエポキシ樹脂の開発を行っています。その部署は、パソコンやスマートフォンに入っているチップ用に保護する材料をお客様に紹介し、製造するという仕事をしています。
ー製造、開発、研究、営業を一貫して行っているんですね!
そうですね。他企業になると製造部門、技術部門、営業部門などが大きく分けられていて横の繋がりは仕事を渡す形になるのですが、弊社の場合テーマアップから製造、紹介、現場への量産対応などに一連して携わることができるんです。これが弊社の強みだと思い、就職しようと思いました。
ー大学や大学院などで学んだことが活かされたと思ったことはありますか?
基本的には全部ですね。エポキシ樹脂の配合は有機化学の知識が必要で、お客様に提案する場合にお客様が求める物性があり、そこに対してどのようなものを混ぜていこうか(調整)というのが、有機化学の合成と酷似している部分があります。お客様が求めているデータや困っている現象を説明する時に物性評価をするのですが、どの測定が妥当であり、必要なデータは何なのかを判断することは、論文や研究発表会に似たものがあります。研究にあたって目標を立てて実験し発表するというのは全部が仕事に繋がっていることなのかなと思いますね。
ー研究発表するというのは、仕事でお客様に売り込んでいくことと似ているということですか?
そうですね。それにプラスして、仕事の場合は納期があるということですかね(笑)
ー今村さんが仕事をしてから感じた大学でやっておいた方が良かったことはありますか?
留学ですね。英語の勉強はリスニングやリーディングは大学受験である程度やったので対応できるのですが、スピーキングはアウトプットしないと出てこなくて、現在の仕事で抱えているのが海外案件なので英語が必須になってくるんですよね。打ち合わせや説明は全て英語になってくるので、私自身で説明できない時は上司や営業の方にフォローしてもらっています。今でも勉強はしているんですけど、大学時代が1番時間あったしやっぱり留学しておきたかったな〜っていう心残りがありますね。
ー理系でも英語が必要な機会があるんですね。
全員に英語が必要になるわけではなくて、営業の方が英語でやりとりする場合があり、英語を日本語に変換する時間がお客様にストレスを与えてしまうんです。そういったものをなくしていかないとお客様の信頼を得にくくなってしまうので自己研鑽として英語を勉強していますね。ちなみに、研究室の論文発表も英語で行うので、英語は避けて通れないと思います。
ー先ほどスピーキングの話をされていましたが、リスニング、リーディングとは違ってスピーキングは学校からやや外れた分野になると思うのですが、もし今村さんが学生だったらどのように勉強しますか?
僕の場合は研究室に留学生が多かったので、その方に英語で話しに行きます。逆に留学生に日本語を教えてあげれば、win-winだしもっと英語で話しておけば良かったなと思いますね。研究室にいなくても大学なら外国の方はいると思うので、友達になるっていう意味でもいいなと思いますね。
ーとりあえず話してみないと始まらないって感じですか?
そうですね。独り言でもいいんですけど、合っているか分かりませんしね(笑)

ー今村さんが一緒に働いていたり、会ってきた人の中で優秀な人の特徴を教えてください。
環境と与えられた役割によって優秀って変わると思うのですが、役割を全うしているだけでも優秀だと思います。私の場合は開発の部署なので、製品を作って売り上げを上げるというのが目的です。その中で大事なのは、想像力とそのための準備ができている人だと思います。自分が行っている製品開発がどのように発展していったらお客様が満足できる製品になるのか、そして競合他社と差別化できていないと売り上げが立たなくなるというのもあります。お客様は我々の製品を使ってさらにお客様に売っているんですよね。だったら、我々のお客様がさらにどのようなお客様に対して製品を開発していくかという「先読み」が結構必要で、この想像力が大事になってきます。それに対して、「我々の技術を使ってこういう提案をしよう。」という準備ができていないと後手後手になっていって、お客様の信頼が掴めなくなっていくんですよね。それなので、そのための準備を行えるかというのが重要になってきます。
ー想像力と準備が必要になってくるんですね。
そうですね。これは仕事全般に通じるんですけど、打ち合わせ一つでも着地点を想像して説得できる資料を徹底的に準備できる人は、各関連部署からの信頼が厚いかなと思います。
ー学ぶべきことが分からない学生に向けて今村さんと同じ仕事をする想定で、大学でやっておいた方が良いことがあったら教えてください。
そうですね。なりたい職業に研究系統を合わせる必要はなくて、仕事の仕方自体はあまり変わらないので、私としては研究テーマがあるのならそれに全力で取り組むことじゃないかなと思います。やり方としては、卒業までにどの状況まで持っていきたいか教授と話し合って、その目標にどうすれば辿り着けるかを考え、現状の環境でできないんだったら、他大学や他企業と協力したりして論文発表や学会発表をする。このサイクルをぐるぐる回した数だけ経験値が増えるので絶対力になると思うんです。このサイクルが仕事の仕方、仕事のサイクルなんです。会社に入るとお客様にものを売るというのが使命になります。そこで必要になるのがアウトプットの技術で、これが1番大事です。また、いろんな意見を聞かないと幅が広がらないので自分の研究を知らない人たちに伝える技術を向上させるというのは大事だと思いますね。テーマがないなら大学の研究室のホームページにたくさんあるので面白いテーマがあったら詳しく調べるというのでいいんじゃないかなと思います。
ー大学に入ると文理関係なく小難しい内容をやると思うんですけど、理論的すぎてこれ何なんだろうと思う部分があると思います。また、将来なりたい姿から今やるべきことにフォーカスしていって、「これ必要あるのかな。」と思う授業があったと思います。その授業にはどのように取り組んでいましたか。
実は無駄なんじゃないかと思うことはあるんですけど、長いスパンで見るとそうでもないんですよね。私は神戸大学出身なんですけど、神戸大学の歴史を学ぶ授業があったんですよね。これ絶対に社会で使わないじゃん!って思うんですけど、お客様と雑談する時とかに意外と知らない話を適当に振ったりできるんですよ。あの時これあったなと話題のネタになったりするのでその時間は意味がないと思うかもしれないですけど、頭に留めとくぐらいはいいかなと思うんですよね。例えば、物理系とか化学系とかで全然専門分野関係ない授業があると思うんですけど、この先会社に入ったりするときに色々な装置とか触らざるを得なくなるんですよ。会社って新しいものを求めるので、この装置導入したいなってミッションがあったりもします。この装置の原理ってなんだろうと思った時、いらないと思った授業と紐付いてたりするんですよ。正直どこで出てくるか分からないですけど、言葉ぐらいは覚えて後で引き出せるぐらいで問題ないので、そこは無駄にせずに単位は取った方が良いと思いますよ(笑)
ー長いスパンで見ると思わぬところで必要になることがあるんですね。
そうですね。大人になってからそういう勉強ってできないんですよね。というのも、大学って技術の密度がすごく高くて、色々な分野が集まっているんですよね。大学の図書館では学費さえ払えば無料で幅広い分野の論文が読めるんですけど、会社に入ると一つ一つ購入しないといけないんですよ。新しい分野に興味あるなと思って論文を探すと1報5000円もしたりするし、会社の許可も必要なんです。今考えると、新しい勉強をするために大学は自由度がすごく高かったなと思います。
ー少しでも興味があれば論文を触ったりして大学を活用するといいんですね。
そうですね。色々な授業をされてるとは思うんですけど、他学科の授業も取れると思うので聞く分にはいいと思うんですよ。やっぱり大学が1番分野を広げやすいと思います。
ー先ほど想像力と着地点を考えると仰っていましたが、大学入学時点で到着点を決めるべきだと思いますか?
決めなくていいんじゃないですかね。視野を狭めるだけだと思います。就職するときは分野を選べないわけではないので、大学入学の時に絞るとその後の将来性がもったいないかなと思います。私の場合、化学系に就職しようと思ったのは3年生の時です。就職までにやりたいことが見つからないのは厳しいかもしれないですけど、興味を持って色々チャレンジしていってその中で見つけていただく方が幸せだと思いますよ。

まとめ
いかがでしたか?今村さんはとても話が上手な方で、楽しく取材させていただきました!高校生、大学生ともにこれからの将来をどう考えるかについても勉強になる話だったと思います!視野を広げ、興味があるものを見つけたら、将来を想像して着地点を考える。皆さんもぜひ実践してみましょう!
気になる業界や職種があったら、気軽にコメントやDMで教えてください!
